以前、初心者向けの投資手法として以下の記事を公開しましたが、今回はそれの続編的位置づけで個別株についてです。(初級編では投資信託をつかった初心者の投資手法を提案しました)
初級編では初心者向けの投資手法としてインデックス投資を主軸にしたやる方を提案しましたが、インデックス投資は暇だという人も多いです。
なので、多くの人はインデックス投資に飽きたタイミングで個別株投資へとステップアップします。
実際、インデックス投資だけをしていると市場の値動きを探ったりしないため、「投資で資産を築くこと」以外にも「経済を読み解く力を身に着けたい」という目的がある人には個別株はおすすめです。
ですので、余裕が出てきたのでインデックス投資以外にも手を出してみたいという方はぜひチャレンジしてみてほしいです。
そこで本記事では、個別株投資の導入とその投資戦略について触れていきます。
中級者のアセットアロケーションはどうすべきか?
個別株の話をする前に、アセットアロケーションの話をします。
初級編の記事では、安定資産(現金)の割合を操作することでリスクヘッジを取ることを推奨しました。
中級者としても、リスクヘッジの取り方は変わりません。基本は安定資産の割合をコントロールしてリスクへ備えながら運用することになります。
このとき、安定資産として現金の代わりに債券を組み込むのも個人的にはアリだと思います。
ただ、資産クラスを増やせばリスクとリターンの見通しが悪くなる上に、管理コストもかかるのは注意しておいてください。
結論としてアセットアロケーションの決め方自体は変わらないので、以下の記事のやり方で決めてもらえればOKです。
>>アセットアロケーションの決め方を解説【キャッシュポジション比率が重要】
投資戦略を決める
次は投資戦略を決めましょう。
個別株投資と一口に言っても、様々な戦略があります。最低限、以下のことは決めておきたいところです。
では、それぞれについて見ていきましょう。
投資先はどこにするか?(日本 or 米国、中小型株 or 大型株)
まずは投資する対象を決めましょう。投資対象の地域について、以下に特徴をまとめてみました。
対象 | メリット | デメリット |
---|---|---|
日本 | ・情報を入手しやすい ・比較的安定した相場 ・為替リスクを受けにくい(リスク無いわけではありません) ・株主優待の恩恵を受けられる | ・比較的成熟した企業が多い ・少子高齢化が進み、将来への期待値が低い面がある |
米国 | ・比較的安定した相場(日本よりはボラティリティが高い) ・配当が大きい企業が多い ・トップ企業が出現する土壌がある ・日本に住む人であれば、海外資産を持つことでリスクヘッジを取ることができる | ・情報入手の速度が少し遅れる ・為替リスクを受ける |
新興国 | ・値上がり幅が大きく高収益を狙える ・将来的な伸びしろが大きい ・日本に住む人であれば、海外資産を持つことでリスクヘッジを取ることができる | ・情報を入手しにくい(英語圏ならちょっとマシ) ・相場が安定しない ・為替リスクを受ける ・地域によっては通貨リスクなども抱える |
ご自身の投資スタンスに応じて、どこを対象として投資するかは考えてみてください。
例えば、優待狙いであれば日本株一択になります。
情報集めるのが面倒だという人であれば日本株に絞るのが良いですし、手間は惜しまないという人なら色んな国の銘柄を持つのもありです。
ちなみにユウシオは日本株、米国株、インド株を保有しています。(インド株は正確にはETFでの保有ですが……)
また、中小型株か大型株かというのも大事なポイントです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
中小型株 | ・短期間での大幅な値上がり益が期待できる | ・ボラティリティが大きい ・優待はちょっと狙いにくい (優待が無いわけではないがボラティリティが大きいために長期保有を前提としにくい) ・高配当銘柄は少ない |
大型株 | ・比較的安定した運用が可能 ・魅力的な優待銘柄が多い ・魅力的な高配当銘柄が沢山ある | ・伸びしろがないため大幅な利益は難しい |
なお、僕は中小型株、大型株を以下の基準で分類してます。東京証券取引所の定義とは違うので注意してください。
僕は中小型株をメインに取引することが多いです。優待狙いで大型株も持ってますが、値上がり益は中小型株で取りに行ってます。
ただ、中小型株はリスクも高くなるので、リスクを取れない人は大型株を選ぶようにしましょう。
値上がり益狙いか配当金狙いか優待狙いか?
値上がり益狙いか配当金狙いか優待狙いかは、ある程度決めておきましょう。
ただ、個人的に多くの人は値上がり益を狙うべきだと思っています。とりわけ「お金を増やしたい」という目的を持っている人にとっては。
なぜなら、配当金や優待はお金を増やすという目的に対して、最短距離ではないからです。
例えば、100万円を原資に1000万円入手しようとすると、10倍にする必要があります。
仮に年間配当3%の銘柄を買ったとしましょう。この場合、100万円が1000万円になるには複利運用で78年かかる計算です。
正直、78年という運用期間は現実的でないと思うのですがどうでしょう?
一方で、値上がり益狙いであれば、10倍というのは可能性が出てきます。
実際、近年の代表的なテンバガー株である神戸物産は、2015年から2021年の6年間で株価を10倍にしました。
値上がり益狙いで投資したからといって、株価10倍の銘柄を狙えるかは別の話ですが、株式投資で資産を築きたいというのであれば、配当金投資や優待狙いの投資をしないのは当然の話です。
ちなみに僕は基本的に値上がり益狙いで、一部優待銘柄も保有してます。
成長株(グロース株)投資か割安株(バリュー株)投資か?
最後に投資手法についてです。投資手法は成長株(グロース株)投資か割安株(バリュー株)投資に大別できます。
正直、どちらを選ぶかというのは好みが大きい気がしますが、個人的には成長株投資をお勧めしています。
というのも、割安株投資は知識や分析力がかなり求められる上に、株価がいつ上がるかの判断ができない点で難しいためです。割安株投資はかなりの企業分析力が求められます。
たまにPBR(一株あたりの純資産に対して今の株価が何倍か?を示す値)が小さい銘柄を買えばいいという投資家もいますが、そんな単純な話ではありません。
PBRの計算のもとになっている純資産が現金のみであればわかりやすいですが、不動産や商品在庫が含まれていれば「PBR≠割安度」とはならないケースもあります。
真の意味での割安株投資をするには、企業の価値を精密に判断して、それが今の株価と比べてどうか?を検証する必要があります。
それには、有価証券報告書や財務三表で分析するのはもちろん、実際の企業に赴いて現地調査することも重要になってきます。(例えば、バリュー投資家として有名な「かぶ1000」さんは状況に応じて企業にコンタクトを取ってインタビューする話を著書でされています)
また、割安株は”そのタイミングでは日の目を見ていない銘柄”でもあります。
そんな銘柄が「次に日の目を見るのはいつか?」なんてのは予想できませんから、それなりに長期での投資は見込まなければなりません。
しかも、長期で保有したからといって、報われるとも限らないのです。
一方で成長株投資であれば、業績の伸びや事業拡大から企業の成長性を判断できますから、もう少し判断がしやすいです。(簡単ではありませんが)
しかも、伸びている企業を買うわけですから、現在進行形で日の目を見ているので結果もすぐに出やすいです。
そういった点から、僕自身は成長株投資をおすすめしています。
銘柄発掘のやり方について
戦略が決まったら次は銘柄の発掘です。
いくつか方法はありますが、基本的には以下の5パターンがメジャーです。
これといっておすすめは無いので、自分のスタイルに合ったものを実践してもらえれば良いかと思います。
参考情報ですが、僕自身は「株探の銘柄探索」「SNS」「普段の生活」が多いです。
銘柄選定のやり方について
気になる銘柄を見つけたら、次は絞り込みを行います。
銘柄選定には「これが正解!」というのはないので、今回は僕が気にしているポイントとおすすめの本だけ紹介させてもらいます。
詳しくは以下の記事で解説しています。使っているサイトも載せているので良かったら参考にしてください。
>>【株式投資】銘柄選定の際に必ずチェックしている5つのポイント
ただ、上記のポイントは「成長株投資かつ長期投資」を前提とした選定ポイントです。
例えば、割安株投資であればもっと買値にこだわる必要がありますし、短期中期投資であればもっとテクニカル分析の要素を入れた方が良いです。
ですので、「成長株投資かつ長期投資」以外の戦略を取るのであれば、他のサイトや本で勉強いただいた方が良いかと思います。
バリュー株投資をするなら以下の本がおすすめです。(グレアムの賢明なる投資家はちょっと難しいかもですが、読めば間違いなく力はつきます)
長期投資はトレンドを味方に付けやすいので多少ファンダメンタル分析が甘くてもOKですが、短期中期だとそうもいかないので上記もポイント以上に企業分析を頑張った方がいいです。
ファンダメンタル分析だと以下の本が詳しいです。
ファンダメンタル分析については、以下の記事でもおすすめ本を紹介しているので良かったら参考にしてください。
>>ファンダメンタル分析するなら読むべき5冊を厳選【保存版】
個別株投資でよくある質問や疑問について解説
以上で個別株の導入と基礎的なやり方の説明は終わったので、ここからはQA形式でよくある質問や疑問への回答を書いていきます。
コメントいただければ追記していきますので、良かったらページ下部から質問いただければと思います。
質問①|何銘柄保有すべきなのか?
答えとしては1~7銘柄ぐらいが妥当かなと思います。
というのもあまり沢山持っても管理するのが大変だからです。
ちなみに7という数字は、アメリカの心理学者であるジョージ・A・ミラーが提唱した「人間は一度に7つのことしか意識できないという短期記憶に関する考え方」から引っ張ってきた数字です。
特に深い意味合いがあるわけではないですが、自身の経験に照らし合わせても7銘柄ぐらいがしっかり決算を見て確認できる範囲かなと思います。
また、読者の中には「1銘柄でもいい?分散できてなくない?」と疑問を持たれる方もいるかと思いますが、”インデックス型の投資信託ないしETFが資産の大部分を占めている”という前提でリスク分散はOKとしてます。
冒頭でも書いたようにインデックス投資に飽きた人が個別株をやるのを想定しています。ですので、すでに資産の大部分で十分な分散投資ができているはず。
なので、個別株で分散性を確保しに行くような手法は本記事では提案しません。
質問②|集中投資すべきか銘柄を分散すべきか?
リスクを取ってでもパフォーマンス優先したいなら集中投資、リスクを取れないなら分散すべきです。
ただ、質問①にも通じますが、インデックス投資の方で十分な分散投資はできているはずです。
であるなら、個別株は多少のリスクを取っても問題ないはずです。
インデックス投資でコツコツ安定的に資産を構築し、個別株で集中投資して大きなリターンを狙うというのは十分両立し得る戦略です。
あとは、ご自身の戦略に合わせて選択してください。
ただ、何度も言うようにインデックス投資で十分な分散性は確保できてますし、リスクヘッジも安定資産(現金)とリスク資産(個別株や投資信託、ETF)のバランスで取れているはずです。
質問③|損切りはすべきか?するならどのタイミングか?
結論だけ言うと、損切りはすべきです。するのは想定していたシナリオから外れた時です。
ただ、想定していたシナリオから外れた時に損切りを実行するのは至難の業です。
というのも、多くの人は言い訳をつけて損切りしなくてもいい理由を探してしまうからです。
ですが、個人的に言わせれば「損切りが遅れて回復不可能になる方が危険」です。
数%程度の損切なら次回の投資で取り返すのは比較的容易ですが、50%とかのマイナスになると次の投資では100%の上昇が必要になってしまうわけです。
なので、いかに損失割合を減らすかが投資では重要になってきます。
僕自身はオニールの考えに従って、7~8%の損失が出る前に損切りを実施することにしています。
数字で決めておけば機械的に判断できますし、言い訳をする余地がなくなるのでお勧めです。
質問④|高配当株投資がおすすめと聞いたが、実際のところどうなのか?
あくまでも個人的な意見ですが、高配当株投資はおすすめしていません。(もしかしたら昔の記事でおすすめしたかも。見解が変わったのですみません。)
理由は以下の3つ。
1つ目は言わずもがなですが、配当金は精々3~5%程度なので3,000万円ぐらいは元手がないと厳しいです。(3,000万円で3%の配当利回りがあれば年間90万の配当で、税金を引いて72万円ほどが手元に残ります)
また、配当金は企業が支払うお金なので、当然ですが企業の財政を逼迫します。
せっかく成長しようとしていても、配当金のせいで成長の芽を潰してしまうということも十分にあり得るわけです。結果、株価自体の値上がりが鈍化してしまうぐらいなら、最初からグロース株を狙うべきです。
また、配当金の減配、ないし廃止の懸念があるのは忘れてはなりません。
実際、コロナの状況下で多くの企業が減配に踏み切りました。
まとめ|【中級】個別株投資の導入とその投資戦略
今回は個別株投資の導入というテーマで解説していきました。
一口に個別株といっても様々な戦略があるため、本記事だけではすべては扱えませんが最低限知っておくべきことは記載しました。
タイミングがあれば追記していきますが、本記事だけで個別株まるわかりとはならないので、ぜひほかの記事や本を参照しながら勉強してみてください。
質問等ありましたら、コメントで受け付けておりますのでお気軽にどうぞ。
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